涼宮ハルヒの憂鬱VI

アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」が終了して一週間以上が経ったというのに、未だに感想をまとめ切れていないのは、祭りの後の虚脱感だとか、単に忙しいからといった単純な理由ではなく、自分自身が納得し切れていないこの物語の結末についてです。

それは、原作を読んだ段階で既に感じていました。
何というか、せっかく広げた風呂敷をそんなせっかちな畳み方でいいの?っていう感じです。

で、これをアニメ化した場合にどう演出して見せてくれるのか、という部分に興味を持っていたわけです。


自覚の無いまま世界改変の力を持ってしまった涼宮ハルヒは、感情に任せて世界を破壊しないように、閉鎖空間内でのみその力を振るうだけではなく、「超能力者」という抑止力をも創造しています。
それは、無意識の理性が司るものでしょう。

中学の3年間は、奇矯な行動はしたものの、その感情の振幅は、古泉たち超能力者の暗躍によって抑えられるレベルだったと思われます。


高校に入学してから、涼宮ハルヒの憂鬱が強まったのは全てキョンに起因するものです。

彼女の「行動」について、本当の意味で興味を持って話しかけてきたのはキョンだけだったからです。

誰にも理解されないと思っていた自分の行為を理解してくれそうな人がいた…ハルヒは、自分が探していた(宇宙人その他の)不思議とは異なる、「共感しあえる他者」という不思議を見つけ出したのですから。

そりゃそうです。
キョンだって、心霊スポットに行ったり、鉛筆を二時間も凝視して動かそうとしたり、同級生の頭を授業中いっぱい睨んで思考を読もうとしたり…という努力をした結果、そんな不思議ありえねー、けどあって欲しいよな、という結論に至った訳ですから。


ここで脱線。
物語の絶対時間特定において、2000年以降とした理由、うろ覚えでしたが再読して発見しました。

中学校を卒業する頃には、俺はもうそんなガキな夢を見ることからも卒業して、この世の普通さにも慣れていた。
一縷の期待をかけていた一九九九年に何が起こるわけでもなかったしな。
涼宮ハルヒの憂鬱」P.7 L.12

つまり1999年以降である事は確定です。
と言っても、「陰謀」の曜日は2010年ではなく2011年に適合するので、現実の暦に合わせて書かれていない事は明らかなんですが…

閑話休題


…それはともかく、キョンは少なくとも中学生のうちは不思議を積極的に信じてたようです。

だからこそ、不思議の存在を「諦めてしまった」キョンにとって、「諦めない」寧ろ(他人に見咎められようが)積極的に行動するハルヒは眩しく気になる存在であり、ファースト・コンタクトであえなく撃沈されたのにもめげず、4月中ハルヒを観察し続け、髪型の法則に気付いてまたもや声を掛けてしまうわけです。やれやれ。

実際、キョンが「変な女好き」と評されているのもむべなるかなむべってところです。

とまあ、そうやってハルヒキョンを「選び」ました。

とはいえキョンにしてみれば、そこまでの積極性は無いというか、その後のSOS団結成に始まる騒動は、あくまで「巻き込まれた」ものでしかない、それがハルヒには理解できないところから憂鬱が始まるわけです。


キョンの言葉に触発されてSOS団を作ったものの、楽しかったのは作った所まで。
キョンに作らせたサイトはヘボヘボで閑古鳥、バニーガールのチラシ撒きは阻止される、不思議を訴えるメールなど届く筈も無く、朝比奈みくるの悩殺メイド写真館はキョンに阻止されるばかりか、それがえらく熱心だったのが気に食わず、市内不思議探索行ではキョンと一緒の組になれない上に、キョンはみくるや長門と二人きりで時間になっても帰って来ない、当然不思議も見つからず、キョンを強制連行した朝倉涼子捜索が成功する筈も無く、遂には自分の弱みをさらけ出したのにキョンは共感を示してくれなかった…

世界は全然ハルヒの思ったようになってないです(笑)
ほんまにそんな力あるんかいな?
キョンでなくとも信じられません。

思うに、ハルヒの世界改変能力は、無意識下の理性が抑え込んでいて、さして発現してこなかったのではないでしょうか?

ハルヒが、ご機嫌で薔薇色の中学時代を過ごしておらず、だからこそ高校で何かが変わることを期待していた事からもそう思われます。

そんなこんなで、なまじ希望が見えたばかりにハルヒの憂鬱は深まるばかり。挙句の果てに自分が選んだ相手が、これまた自分の選んだ相手(玩具)とジャレているのを見たら、これはもう怒り心頭、嫉妬全開だわ、そりゃ世界を作り直したくもなるって。

対するキョンは、基本的に傍観者を決め込んでいますが、確実に当事者な訳でSOS団のほかのメンバーから次々に告られます。

でも実際問題、長門・みくる・古泉の告白は証拠があるものでもなく、スルーしていたキョンに、朝倉襲撃・朝比奈さん(大)の来訪・閉鎖空間と神人という出来事が突きつけられ、流石にそういう現象を認めざるを得ないキョンですが、事ここに至ってもやはり「全ての原因はハルヒにある」と嘯いているキョンなのでした。

そして遂に賽が投げられます。

キョンと一緒に閉鎖空間にやってきて、絵に描いたような不思議な出来事に遭遇し、初めてキョンが積極的に自分を引っ張ってくれている…ハルヒにとっては待ち望んだ世界、楽しくない訳がありません。

もとより自分の無意識が行っている行為ですから、いずれ世界は自分の思うようになる事が予感される世界で、ハルヒはまたもやキョンに水を注されます。

「元の世界に戻りたいと思わないのか?」
  元の世界が気に入らないからこの世界を作るの

「俺は戻りたい」
  私は戻りたくない(どうして一緒に来てくれないの?)

「俺は連中ともう一度会いたい」
  興味無いわ(私が興味があるのは、興味を持って欲しいのは…)

この辺りのキョンの言葉は、どれもおざなりです。
だからこそ、原作では200mトラックの真ん中でしていた会話が、走りながらの会話になったのでしょう。

自分と同じように、普通ではない世界を望んでいると思っていたキョンに拒絶された時、ハルヒは立ち止まってキョンの手を離します。

その絶望は、キョンをも消し去る事を望んだのかもしれません。

原作では、遠くで校舎や空間を破壊しているだけだった神人は、アニメではキョンに迫って来ます。

ハルヒは、完全に価値観を同じくする他人など存在しない、という現実世界で散々突きつけられていた冷徹な事実を、逃げてきたこの世界でもまたもや突きつけられた訳です。

それで本当に絶望してしまえばジ・エンドですが、キョンも目を逸らしていた事実と向き合い、ハルヒにその真情を吐露し、キスをするという突発的な行為で、全てが中断され、恐らく思考停止に陥ったハルヒは、理解不能な事柄を無かった事として処理するために「夢オチ」にして元の世界に戻ることで当座の解決としたのです。

こうやってなぞってきて、ひとまずの説明はついたのですが…

う〜ん…果たしてキスひとつで世界観が変わるものなのか?という最初から感じていた疑問はやっぱり解けそうもありません。


まあ、取り敢えず大団円という事で、一旦収めたいと思います。
この作品に関わった全てのスタッフの方に最大限の敬意と感謝をこめて。
楽しいひと時をありがとうございました。



<蛇足>
まとめ切れなかった事つらつらと…

「新世界の神になる」…独裁者たる神によって治められる世界が、楽園である筈はありません。
「独裁者スイッチ」…気に入らない者を消し去っていった時、そこに残るものは…

作品中、家族・肉親が描かれるのはキョンだけ。
特にキョン妹は、原作以上に頻繁に登場し、キョンとの良好な関係を見せていました。
それは、どちらかというと、兄妹というより父子的な関係性のように見えます。
そして、ハルヒについては野球場のエピソード以外は徹底的に私生活が排除されています。
一人称でキョンの見ていない場面を知りようが無いという以上に。
この辺りが以前書いた「ハルヒは自己評価が少ない子供である」という部分に繋がってくると思っています。

長門かわいいよ長門
って全然書けなかったよ、長門ネタ。

YUKI.N>また図書館に_」キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
ほんとはサイトタイトル、「 」内を定期的に変えようと思ってたんですよ。
なんかアクセス急増してやりにくくなったけど、次は『ちょいヲタ日記「また図書館に_」』にしようと思ってたのに〜

画像はいつものようにくりーむうぇるさまから拝借。
Web拍手って、自由に画像貼れると思ってたけど駄目みたいなのでここに貼っておきます。
見に来てくださって、ありがとうございました。


冒険でしょでしょ?
  作詞:畑亜貴  作曲:冨田暁子


答えはいつも私の胸に…
なんでだろ あなたを選んだ私です
もうとまらない 運命様から決められたけど
I believe 真似だけじゃつまらないの
You'll be right!
感じるまま感じることだけをするよ


冒険でしょでしょ!? ホントが嘘に変わる世界で
夢があるから強くなるのよ 誰の為じゃない


一緒に来てくださいっ
どこまでも自由な私を見てよね
明日過去になった今日のいまが奇跡
I believe you…