読売新聞政治面「ライトノベルと自衛隊」
12月21日の読売新聞朝刊政治面のコラム「政なび」(編集委員 永原 伸)に、「ライトノベルと自衛隊」というタイトルで記事が掲載されていました。
ライトノベル出身の女性作家による自衛隊をモチーフにした小説が、若い人の間で読まれていると聞いた。
ライトノベルとは、中学生や高校生が好んで読むイラスト混じりの小説の事だ。《ライトノベルと自衛隊》の取り合わせの意外さに惹かれて、話題の小説――有川浩さんの「海の底」(メディアワークス刊)を手に取った。あらすじはこうだ。
ザリガニを巨大化したような未知の生物が、横須賀に襲来した。機動隊はバリケードを築いたが、防戦に躍起だ。湾内では逃げ遅れた子どもたちを乗せた海上自衛隊の潜水艦が取り囲まれた。この未曾有の事態に、日本はどう対応するか――。
よく出来たエンターテイメントだと思ったが、いくつかの場面で目が止まった。
永原氏が注目したのは、自衛隊が武器使用をためらい救出作戦が失敗するシーン、世論の反発を恐れる政治家がためらううちに機動隊が敗走するシーン、警察指揮官が機動隊委員に「諸君がどれだけ健闘しようと、意気に感じて次戦力を投入してくれる人間は官邸には存在しない」と語りかけるシーン、機動隊員が「俺達はそういう国の役人だ」とつぶやくシーンなどでした。
そこから、有川氏の主張を「安全保障をないがしろにする風潮や、その上に築かれた政治・行政システムに疑問を投げかけ、(阿部首相の主張になぞらえ)安全保障分野における脱「戦後レジーム」を図れ、ということだろう。」と読み解いています。
そして、周辺事態法の制定や有事の際の法的仕組整備などを踏まえつつ、まだ不備が多い事に言及し、こう結んでいます。
だが、若い人たちに多く読まれていることを思うと、「そういう国」と呼ばれるような国のありようのままであっていいのか、考えさせられる。
「海の底」を読んだ若い人たちがどんな感想を抱いたのか、機会があれば尋ねてみたい。
「海の底」を読んでいないのと、当ブログには政治的な話題を持ち込みたく無いので、記事を紹介するに留めておきますが、4大紙政治部の記者(と思われる方)が、若者向けの本を読み、きちんと考察しているのは良いことだと思いました。
粗筋を読んでいて、潜水艦に閉じ込められた子供たちと自衛官というシチュエーションから、メアリ・W. ウォーカーの「神の名のもとに」を思い出しました。
これも極限状況下における沢山の子供とたった一人の大人、そして外部から救出の為に奮闘する物語です。
アメリカでいかにも起こりそうな、狂信的カルト教団による凶悪な犯罪に対して、どう立ち向かっていくのか?果たして人質は無事救出されるのか?
最後まで息が詰まり、読み終えたときに涙が出そうになりました。
是非ご一読ください。
<追記>
記事の全文は悠々日記さんに掲載されています。
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