第17話「最後の夏休み」

「明日…
 明日、その古い空間に行ってみよう。
 それでもし何も見つからなければ、自由研究はそれでおしまい。
 適当に済ませて終わらせちゃおう。
 その後は楽しい場所に行こう。

 最後の夏休みだから…」


ぎゃぁああ〜、ハラケン、らめ〜!
それ死亡フラグだから言っちゃらめぇ〜


や、まあハラケンなんざどうなってもいいんですけどね。
以前「時の石」を引き合いに出したように、前向きでない精神の持ち主は、夕闇の国に誘われてしまうんですよ。

まあ、せっかくのヤサコ告白タイムをジョン・ウーばりの鳩乱舞でかわしたからには、カンナのもとに行くしかないかも知れんな。


けど、階段の下に佇んでいた「アレ」がカンナの魂、或いは残留思念である保障などどこにも無いのです。
古来、魔が人の望む姿形をとるのはありふれた事。
アレが邪悪な意思を持った何者かである可能性は否定できないのです。


同じ事は4423にも通じる話で、デンスケイサコを助けてくれた4423と、カンナに「道」を教えた4423は、「どちらも4423を名乗っているだけ」であり、同一の存在であると証明されている訳ではありません。


さて、では話はこのままオカルトな方向に流れて行ってしまうのでしょうか?
これまでの小ネタを見る限り、磯監督は相当なSFマニアと見受けられるので、そんな安直な解決はしないと思います。


そこで、前回の雪辱も兼ねて、電脳コイル世界を再度SF的に検証してみました。


イマーゴ
イマーゴは、当初の思考によるメガネの制御だけではなく、電脳空間の事象を物理刺激として直接感知できる性質を持っていると考えられます。

脳から電脳空間への情報入出力が可能であるという事は、記憶・感情・思考といった脳が司る情報を電脳空間に書き込んだり、読み出したり出来るという事になります。


つまり、イマーゴの持ち主のである人間の思念が電脳空間に転写されて、その人間が電脳空間から離れても残り続ける可能性があると考えられます。
そう考えれば、残留思念や地縛霊といったオカルト現象も、電脳空間に転写された人間由来の情報が観測されたものとして説明できるのではないでしょうか。


勿論、空間に転写された情報は、オリジナルに比べて劣化したコピーであり、本来の情報の多くを失っていると見るべきです。
また、何故人間由来の情報が転写されるかを考えると、通常の感情や思考の発露とは比べ物にならない大出力で放出される場合が想定され、それはまさに大事故や死の瞬間などが当てはまるのではないでしょうか。

そのようなシチュエーションにおいては、情報を放出する側の脳にも多大な負担がかかり、場合によっては脳細胞を破壊してしまう事もあるでしょう。
それが、意識不明者や植物人間を生む原因であり、「生贄」を必要とすると言われる所以なのかも知れません。


イリーガル
イリーガルについて劇中では、ウィルスであるとか、ペットマトンの成れの果てであるとか、あの世からさまよい出てきた亡者であるとか諸説が提示されています。

ペットマトンでもウィルスでも、自律制御型のプログラムがベースになっているようで、意思や感情を持っているようでもあり、社会性すら持っている場合もあり多様に分化していると考えられます。


そのような自律制御プログラムに、上記「電脳空間に転写された人間の記憶・感情・思考」が付加された場合、擬似人格や擬似電脳体として行動する事も有り得ると考えられます。


もしも付加された人間由来の情報が「負の感情」に塗りつぶされたものであったとしたら…
そして彼らが、近づいてきた人間の記憶野から掠め取った情報を元に自分の姿を構築できるとしたら…

その擬似電脳体が、現実の人間やその電脳体を呼び寄せたりしようとして、結果的に人間が危害を加えられる可能性もあるのではないでしょうか?

横断歩道の向こう側や階段の上で呼んでいるのは、そういったイリーガルなのかも知れません。


サッチー電脳ナビ
前回ゆすらさんのエントリ中で紹介されていた【復習から】電脳コイルの設定を考察するスレ まとめ【妄想まで】(週刊少年二次元さま)の中で、「子供達がサッチーに追われている時、なぜメガネの電源を切ってしまわないのか?」という疑問が出ていました。
この謎を電脳ナビ電脳メガネの仕組みから解読してみます。


電脳メガネが表示する電脳空間は、建物から人物に至るまで、全てのものを電脳空間内に再構築した上で、メガネのレンズ上で現実画像に重ねて投影されています。

これは、大黒市の建物全てが3Dデータとして保持されており、常に更新されている事を意味します。

アクセスガイドによれば、建築物の塗料や衣装にも微細な端末(マイクロマシン?)が混入されており、表面素材などの情報を含めデータ化されているとの事です。(この時点ではスレ住人のみなさんは知らなかったようです)


電脳ナビは、このマップ情報に、歩行者等のリアルタイム電脳体情報をマッピングして、制御に活用していると考えられます。
(その他、街頭監視カメラやNシステムの進化形など画像情報も使用していると思われます)

電脳体については、メガネ着用者は常時サーバ(分散型で単独のサーバが存在しないとは思います)と交信し、自分の電脳体情報を更新しているだけではなく、メガネから得られる他の有機生命体についても情報としてサーバに送信しているのではないかと考えています。

今回、医者もメガネが手放せないと言っていた事から、電脳メガネは老若男女に普及したデバイスと考えられますが、誰もが常時装着している訳では無いのは劇中でも明らかです。


電脳ナビが、マップ内の全ての人間を把握するためには、少なくともメガネパブリックドメイン上の存在する間は常に電脳体としてセッションを維持している必要があるのではないでしょうか?

だとすれば、「パブリックドメイン内でメガネの電源を切る事は出来ない or 電源を切っても電脳体は維持される」という想定が成り立ちます。


前回、おばちゃんが「警察権が無いから現行犯」と言っていた事から、サッチーパブリックドメイン内の違法ソフト類をその場で消去する事は出来ても、違法ソフトの使用者個人を特定して追跡し、後日これを消去する事は出来ないと考えられるのです。


個人を特定しなくても、パブリックドメイン内に電脳体が存在している以上は、徹底的に追尾して消去を図る理由がこれで説明できます。
逆に、神社や個人宅等の管轄外ドメインやプライベートドメインに逃げ込んでしまえば、サッチーが諦めざるを得ないというのも納得がいきます。


まあ、パブリックドメインの管理が、国土交通局(省)ではなく郵政局が担当している、というのも大きな謎なんですけど。


イサコ
おばちゃん曰く、イサコ暗号の殆どは解読可能」「まさか、暗号のルーツがメガばあメタタグと同じとはな…」という事で、やはりイサコ(恐らくその兄)もメガばあと何らかの関係があるようです。


イサコ兄は、コイル電脳探偵局初期メンバーではないと思ったんですが…


そして、ミチコさんを取り込んだ後と、サッチーにより制御系の暗号を破壊されつつある時のイサコの台詞が気になります。

「これで臨界だ。
 あとちょっとで通路が開く。
 今度こそ一年前のような事にはならない。」


「またコントロールできない場所に開いてしまう…
 去年のあの時のように…」


…一年前にも同じ事を試みたが、コントロールできない場所に通路が開いてしまった、という事ですね。
それは、カンナの事故に関係があるのでしょうか?
イリーガルの側から現実世界に働きかけが出来るようになったのは通路が開いたからなのか?


カンナの事故の原因に、イサコが関与しているとしたら…
重い、あまりにも重すぎる話になってしまいそうで恐ろしいですね。


以上、今回はちょっと真面目に考察してみました。
物語が明るいラストに向かう事を祈って止みません。




<関連記事>
第16話「イサコの病室」

第15話「駅向こうの少年」

第14話「いきものの記録」

第13話「最後の首長竜」

第11話「沈没!大黒市」

第10話「カンナの日記」

磯光雄監督インタビューより

メモ

第7話「出動!!コイル探偵局」

第6話「赤いオートマトン」

第5話「メタバグ争奪バスツアー」

第4話「大黒市黒客クラブ」

第3話「優子と勇子」

第2話「コイル電脳探偵局」

第1話「メガネの子供たち」


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