とある飛空士への追憶
各所で話題の「とある飛空士への追憶」、ようやく入手できたので一気に読みました。
噂に違わぬ佳作で、爽やかな読後感を得られました。
確かに、ジブリ好き、もっと言うと宮崎駿の飛行シーンが好きな人には堪らない作品と言えるでしょう。
読みながら、アニメになったシーンが完全に脳内再生されてましたから。
(以下ネタばれあります)
主人公シャルルと千々石(ちぢわ)との空戦はまさに紅の豚でしたし、ヒロイン・ファナのつよさは宮崎アニメのヒロインと相通じるものがあります。
特に、ファナが身に付けた処世術がクライマックスへの伏線となるあたり、納得させられるものがあり、全体に手慣れているけど上手いなぁ〜という感じです。
個人的には、敵国「天ツ上(あまつかみ)」が日本をイメージしており、天ツ上最強の戦闘機として「真電」という機体が登場しているあたりがたまりません。
字こそ違えど、「震電」と言えば、高度8700mで750km/hを叩き出す、日本海軍十八試局地戦闘機 九州飛行機J7W1という幻の名機ではありませんか。
これが実践投入されて華々しい戦果を挙げているとなれば、架空戦記好きでなくとも飛行機好きならちょっと涙ぐんでしまいます。
実際にはプロペラトルクにより右傾斜が激しかったようなので、どこまで闘えたのか判りませんが、コンパクトな機体に大出力エンジン、先翼式で武装が首尾線に集約されているので、最強の戦闘機になり得たのでは?という妄想が膨らみます。
また、クライマックスで登場する空戦機動「イスマエルターン」も、実際の「インメルマンターン」をもじったもので、この辺りニヤニヤしっぱなしでした。(なんか違う…)
そういう意味では、シャルルと千々石の因縁話はもう少し複雑にして欲しかったなぁ〜というところですか。
そして、ラストの余韻に浸りながら表紙を見ると、改めて先程の感動が甦り、彼らの行く末に思いを馳せずにはいられなくなるのでした。
とはいえ、安易な後日談とかは出して欲しくないので、これはこれで完結したままにして欲しいものです。
あと、「震電」が気になった方は、下記サイトが非常に詳しいので参照ください。
「震電」 日本海軍十八試局地戦闘機 九州飛行機 J7W1(さるくすん様)
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